「整腸剤」は家庭に一つは必ずあるような身近な薬であり、しょっちゅうお世話になっているという人も多いかもしれません。逆に、「薬なんだから気軽に飲むわけにもいかないし・・・」と、調子が悪くても飲むのに抵抗を感じる人もいるでしょう。
整腸剤は一体どんなときに飲んだらよいのでしょうか?また、メーカーによる違いや飲む際の注意点はあるのか、腸内フローラ改善に役立ってくれるのかなどを詳しくご説明します。
目次
整腸剤とはどんなもの?
整腸剤とは、便通を整えるための薬です。
便秘や下痢、軟便などの症状があるとき、腸内環境を整えてそれらを改善する成分が含まれています。ほとんどの整腸剤は医薬品の中では人体に緩やかに効く部類に属し、副作用などが少なくなっています。
整腸剤に含まれている成分に違いはあるのか?
それでは、整腸剤にはいったいどんな成分が入っているのでしょうか。代表的な2つの整腸剤の内容を比較してみましょう。
太田胃散整腸薬
この薬は第3類医薬品に分類されています。
第3類医薬品とは、医師の処方箋がなくても販売できる薬の中で、最も安全とされる薬を指します。そのため、ネットや通信販売で購入することも可能なのです。
これに対して第一類・第二類医薬品は服用後のリスクが高くなるものが指定されているため、 薬剤師の対面販売や販売店舗への常駐が定められています。
太田胃散整腸薬は、ストレスでお腹を下したりガスがたまってしまったりと、お腹の調子が安定しない人のための整腸薬です。
配合成分と作用
成分の種類 | 成分名 | 作用 |
---|---|---|
整腸生菌 | ビフィズス菌 | おもに大腸の腸内環境の改善。乳酸と酢酸を生み出し、悪玉菌の増殖を防ぐ善玉菌の働きをする。 |
ラクトミン(ガッセリ菌) | 小腸内の腸内環境の改善。悪玉菌の増殖を防ぐ。 | |
酪酸菌 | ビフィズス菌をサポートする。胃酸に強く腸まで届き、ビフィズス菌の増殖を助ける。 | |
生薬 | ゲンノショウコエキス | 軟便や便秘を防ぎ、便通を整える。腸のぜん動運動が正常に行われるように調整する。 |
アカメガシワエキス | 軟便や便秘を防ぎ、便通を整える。胃や腸の働きをよくし、傷んだ粘膜を修復する。 | |
ゲンチアナ末 | 胃を健やかにする。胃の機能をよくし、消化を促進させる。 | |
消化酵素 | ビオヂアスターゼ1000 | 消化をよくする。デンプンやタンパク質の消化を促進させる 。 |
ヤクルトBL整腸薬S錠
この薬は指定医薬部外品となります。
医薬部外品とは「医薬品に準ずるもの」という扱いで、効果や効能が認められた成分は配合されているものの、治療というより予防を目的とするものが多くなっています。
指定医薬部外品に分類された製品は、人体に対する作用がより緩やかになっていますので、もしこの薬が合わなかったとしても、激しい副作用が出る心配はないということになります。
ヤクルトBL整腸薬は、便通を整えたり、腹部の張り感や軟便、便秘などの症状を改善したりする薬です。
配合成分と作用
成分の種類 | 成分名 | 作用 |
---|---|---|
整腸生菌 | ビフィズス菌 | おもに大腸の腸内環境の改善。乳酸と酢酸を生み出し、悪玉菌の増殖を防ぐ善玉菌の働きをする。 |
カゼイ菌 | 小腸内の腸内環境の改善。乳酸を生み出して悪玉菌の増殖を防ぐ。 | |
健胃成分 | カルニチン塩化物 | 胃腸など消化管の機能を向上させる。消化をよくして食欲を増進させる。 |
この2つの整腸薬の違いは、生薬が含まれているかどうか、そして医薬品としての部類も異なっている点にあります。
この他の整腸剤については下記記事を参考にご覧ください。
悪玉菌を制し、善玉菌を助けてくれる整腸剤の働き
整腸剤には、なぜ生菌だけでなく他の成分も含まれているのでしょうか。
消化をよくする成分を組み合わせる理由
上記の表の中の整腸生菌は生きたまま腸まで届き、悪玉菌(ウエルシュ菌、大腸菌など)を制して善玉菌(ビフィズス菌など)を増やす働きをします。
そこに消化をよくする成分や生薬などが加えられているので、胃腸の働きがよりよくなり、腸内環境の改善を助けることができるのです。
生薬は自然界に存在する植物や動物、鉱物などから取れる成分を利用した薬です。これらの原料を生のまま、あるいは乾燥させるなどして使用したり、加工を施して使用する場合もあります。
太田胃散整腸薬には、胃や腸の働きを向上させる成分を含んだ生薬が使われているのですね。
どの整腸剤もみな同じ?
例に挙げた二つのうち、太田胃散整腸薬は第3類医薬品に分類され整腸生菌以外にも生薬などが含まれており、より強力な効き目が期待できます。ただし、副作用が出る可能性もありますので、その点は注意が必要です。
一方ヤクルトBL整腸薬S錠は、指定医薬部外品ですので、体に対する作用がより緩やかで副作用などのリスクが低くなっています。
このように、同じ整腸剤といっても含まれている成分が異っており、医薬品としての部類や効き目も異なってくる場合があるのです。
人気整腸剤5種の成分も分析しておりますので、参考になさってください。
>>整腸剤の中身を知ろう
結局、整腸剤は腸内フローラ改善に役立つのか?
整腸剤は腸内フローラ改善に役立ってくれるようですが、服用時にはいくつか注意しなくてはならない点もあります。
整腸剤による腸内環境の改善は一時的なもの
整腸剤に含まれる生菌は、腸内で乳酸や酢酸などを作ることで悪玉菌の増殖を防ぎます。
また、乳酸や酢酸には腸内環境をよくして腸の運動を正常にし、お腹の不調を改善する働きもあります。そのため、腸内フローラの菌のバランスを良好にするのに役立つといえるでしょう。
ただ、もともと腸内に住み着いているものではなく口から摂った乳酸菌は腸への定着が難しいとされています。菌により期間は変わりますが、いずれ排出されてしまうため、整腸剤による腸内フローラの改善は一時的なものだといえるでしょう。
薬の飲み合わせには要注意!
持病があって薬を常用している方は、整腸剤を飲む前に医師や薬剤師に相談したほうが安全です。飲み合わせによっては薬の成分同士が打ち消し合って、今飲んでいる薬が効かなくなってしまう恐れもあるからです。
自分の腸には合わない生菌もある
自分の腸に合う菌は人によって違ってきます。整腸剤を飲んでも効き目が見られない場合、その菌は合わないという可能性もあるので、他の菌が含まれるものに変えて試してみましょう。
ただ、整腸剤は即効性がなくゆるやかに効いてくる薬ですので、まずは2週間ほど試してみる必要があります。しかし、それ以降も効き目が現れない場合は、使わないようにしたほうがよいでしょう。
整腸剤には習慣性の心配はなし
同じ腸の薬でも、下剤には習慣性が生じてしまう場合もあるとされています。一方、整腸剤には習慣性の恐れはないとされているので、その点は安心です。
生薬などが配合されたのものには副作用の注意も必要
太田胃散整腸薬に使用されている生薬は自然由来のものではありますが、薬である以上は副作用が出る可能性があります。ですので、服用後に副作用と思われる症状が現れたら、飲むのはやめて医師に相談したほうが安心です。
ヤクルトBL整腸薬S錠は生菌が主成分のため副作用は出にくいようですが、菌が腸に合わずに不調を感じることもあるかもしれませんので、用量はしっかり守り、念のために服用後の変化にも注意しておきましょう。
他の整腸剤に関する記事はこちら
整腸剤を常用せずに腸内フローラを改善しよう!
このように整腸剤は人体への作用は比較的穏やかに作られていますが、薬ですので常用的に飲むというわけにはいきません。腸の不調を感じるとき、緊急的な対応として使うものと思っておいたほうがよいでしょう。
腸内フローラを最適な状態で保ちたい場合には、次のような方法を試してみてください。
①現在、便秘・下痢・軟便などのトラブルがある方
整腸剤を服用してしばらくようすを見てみましょう。
便通の改善が見られたら、その後はヨーグルトなどの発酵食品のように善玉菌を多く含む食品に切りかえ、食生活の改善を意識し続けていくことが大切です。
整腸剤は一時的に使用するものなので、その後は副作用などの心配もない食品から善玉菌やそれらをサポートする成分を取るようにするのが理想的です。
乳酸菌サプリメントも、生きた善玉菌を凝縮したものですので、理想的な腸内フローラの整え方と言えます。
>>おすすめ 手っ取り早い乳酸菌サプリメント
②現在トラブルは特にないけれど、腸内環境を最適に保ちたいという方
現在トラブルや不安がない場合でも、乳酸菌サプリメントがおすすめです。乳酸菌サプリメントは
- 乳酸菌の数が非常に多いもの
- 多種類入っているもの
- 乳酸菌をサポートする成分も一緒に添加されているもの
など、種類も豊富です。副作用の心配もまずありません。腸内フローラ改善に有効な善玉菌や、そのサポート成分を効率よく強く取ることできます。
まとめ
身近にありながら、意外と知らなかった整腸剤について理解していただけたでしょうか。整腸剤の中には甘いお菓子のような味のものもあり、つい薬ということを忘れて食べ過ぎそうになることもあるほどです。
しかしやはり薬の一種であり、緊急的に使用するものだという意識を持っておくようにしましょう。
>>整腸剤って危険なの?整腸剤のやめ時っていつ?
整腸剤で腸内環境を整えたら、それをキープできるように腸内フローラを最適に保てるような食事や生活習慣を心がけていきたいですね。