日本には数多くの発酵食品があり、一つも口にしない日はないのではないかというほどです。
微生物の働きのおかげでおいしく、体によいものに変化した発酵食品。腸にもよいと言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか?
腸内フローラにとって発酵食品は本当に役に立つものかどうか・・・詳しく解説していきます。
目次
発酵によって栄養価もアップ!
まずは、発酵食品にはどんな栄養素が含まれているのかを見てみましょう。発酵前にはなかったり、増えたりした栄養素を表にしています。
発酵による食品の栄養素の変化
食品 | おもな栄養素 | 発酵食品 | 発酵後に増える栄養素 |
---|---|---|---|
大豆 | タンパク質
大豆イソフラボン 大豆サポニン 必須アミノ酸など |
納豆 | ビタミンB2 ・ビタミンK2 ナットウキナーゼ・ポリグルタミン酸ビタミンB12 |
味噌 | ビタミンB2・ビタミンE・
ブドウ糖・脂肪酸エチル |
||
醤油 | ビタミンB2・ナトリウム
ペプチド類・メラノイジン |
||
牛乳 | タンパク質など | ヨーグルト
チーズ |
乳酸菌・乳酸カルシウム
グルタミン酸 |
野菜 | ビタミン類
食物繊維など |
漬物 | 乳酸菌・ビタミンB群・ビタミンA |
ぶどう | ブドウ糖・果糖
食物繊維など |
ワイン | 酵母菌・ポリフェノール
タンニン |
米 | 炭水化物など | 甘酒 | 麹菌・コウジ酸 |
微生物のおかげで・・・
上の表をご覧ください。
発酵食品には、もとの食材にはなかった栄養成分が新たにできたりするので、発酵前よりも栄養価がアップしているのが分かります。これは微生物がアミノ酸や糖を分解してくれたおかげです。
そのため、旨味成分もより増えておいしさが増し、さらに体に良い働きをしてくれる成分もます…文句なしの食材と言えます。
胃酸に負けない発酵食品は?
発酵食品に多く含まれる有効成分が腸に届くまでには、実は越えなくてはならないハードルがあるのです。それが「胃酸」です。
胃酸のハードルを越えられる発酵食品
胃酸はその名の通り胃で分泌される消化液ですが、強い酸性であるため、有効成分の中にはこれによって死滅させられてしまうものが多くあります。
しかし、植物性乳酸菌、納豆菌などは胃酸に強く、腸まで生きて届くとされています。つまり、漬物や納豆は胃酸の影響を受けにくい発酵食品と言えるでしょう。
胃酸にやられても善玉菌を助ける動物性乳酸菌
一方、ヨーグルトに含まれるビフィズス菌や動物性乳酸菌は胃酸に弱いものが多いようです。ですが、死んだ後も腸で善玉菌のエサとなって増殖させ、腸内環境をよくすることが実験などでわかっています。
また、発酵食品に多く含まれる酵素も多くが胃酸で分解されますが、麹酵素は酸に強いので腸まで届くとされています。
発酵食品は腸内フローラを改善できる…その真実に迫る
それでは、発酵食品を食べることで腸内フローラの改善ができると期待してもよいのでしょうか。
善玉菌を補給できる
腸内フローラを改善するには、善玉菌を増やし悪玉菌を抑えて、日和見菌に善玉菌の味方をしてもらうことです。善玉菌優勢の細菌バランスにすることで、腸内環境はよくなります。そのために増やしたい善玉菌そのものが豊富に含まれる発酵食品を摂取するわけです。
乳酸菌などは腸に定着するのが難しく短期間で排出されてしまうため、発酵食品をひんぱんに食べることで腸に善玉菌をコンスタントに補給することができます。
善玉菌のエサをたくさん届けて増殖させる
また、発酵食品には善玉菌のエサとなって増殖を助けてくれる成分も多く含まれています。たとえば納豆やヨーグルトなどにはオリゴ糖が含まれますが、これは胃酸のハードルを越えて腸に届く、善玉菌の大切な栄養源です。
同じく栄養源となる食物繊維や、消化を助ける酵素などを含むものも多くあります。
さあいかがでしょうか、発酵食品が腸内フローラを改善してくれるというのは本当でした!発酵食品は善玉菌を優勢にするための成分が多く含まれており、身近で手に入れやすく食生活に取り入れるのも容易です。
腸内フローラにとってはかなり力強くサポートをしてくれる存在ですね。
こうして食べよう!発酵食品を摂取する際の注意点
発酵食品には胃酸の影響を受けやすいものと受けにくいものの2種類がありましたね。腸内フローラをよりよく助けられるように、食べるときの注意点がいくつかあります。
胃酸の影響を減らす食べ方は?
ヨーグルトやチーズなどに含まれる動物性乳酸菌やビフィズス菌は胃酸に弱いため、食べ方を少し工夫する必要があります。
胃酸を薄めてその働きを弱めることで、胃で死んでしまう善玉菌を減らすことができます。ですので、ヨーグルトを食べる最適なタイミングは胃酸が薄くなる食後や、水分を多めに取ったあとです。
チーズと腸内フローラの関係を解説した記事は下記リンクより読むことが出来ます。
乳酸菌をさらにたくさん取るために
漬物の中でも乳酸菌が多いのは、ぬか漬けやキムチなどある程度の期間漬け込んだものです。これらを食べる際の注意点は、高温になると酵素などの有効成分が変性してしまうため、加熱調理を避けることです。これは納豆も同じですね。
同じく、味噌もなるべく低い温度で調理しましょう。
塩分には気をつけて!
発酵食品を摂る際にもう一つ注意したいのが塩分です。
特に漬物類、チーズなどは製造過程で塩は必需品。その為摂り過ぎになりやすいのです。他の発酵食品もそうですが、毎日少しずつが肝心です!
このような注意点を覚えておけば、発酵食品の力をさらにパワフルに発揮させることができそうです。
美肌、免疫力アップ・・・目的別に発酵食品を選ぼう
ではここで、目的別に取るとさらに効果的!とされる発酵食品をご紹介します。
美肌の味方なら、古くからの日本の知恵、甘酒、漬物!
発酵食品は「抗酸化力」も高く、活性酸素を撃退して細胞の老化を防ぐなど、美肌のために大いに働いてくれます。
甘酒・・・甘酒を作るときに使う麹に含まれる「コウジ酸」は、シミのもとになるメラニンができるのを防いだり、弾力のある肌を保つ働きをするとされています。
また、米を発酵させる麹菌には「ビオチン」という肌を健やかに保つ成分を増やす作用があります。
漬物・・・漬物のよいところは、乳酸菌が多いだけではなく、野菜の食物繊維も一緒に取ることができる点です。植物性乳酸菌は食物繊維と一緒に取るとより活性化します。また、発酵により、肌の健康や美しさをサポートするビタミンB群やビタミンAも増えています。
さらに漬物は加熱せずに作られるため、代謝を向上させ体を若々しく保つ酵素の損失もありません。
免疫力が向上、感染症を防ぐなら、ケフィアや納豆で
体全体の70%もの免疫細胞が腸に集まっているとされています。そのため、腸を健やかに保つことは免疫力を高めることにつながるのです。
ケフィア
ケフィアはヨーグルトに似た発酵乳ですが、乳酸菌だけではなく酵母も使うため、両方の菌の働きを同時に得ることができます。酵母には、腸内フローラの善玉菌を増やして細菌バランスを整える働きがあります。
納豆
納豆に含まれる納豆菌は腸内フローラの中の悪玉菌を退治するとされています。また、納豆菌自体が善玉菌となるうえに、他の善玉菌も増やし安定させてくれるのです。さらに、大豆は善玉菌の栄養源となるオリゴ糖も含んでいます。
納豆と腸内フローラに関する記事は下記リンク先にまとめています。ぜひご覧ください。
腸内フローラを良くする、ヨーグルトやキムチは毎日食べよう!
腸内フローラを改善するには、なんといっても善玉菌を増やすことです。乳酸菌を豊富に含む発酵食品を取りましょう。
ヨーグルト
善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を豊富に含むだけではなく、オリゴ糖や乳糖が善玉菌を増やす働きもしてくれます。
ヨーグルトを少し温めることで乳酸菌が活性化し、有効成分がより吸収されやすくなります。また、有害物質などを排出しやすくなり、腸内フローラの改善に役立ちます。
キムチ
キムチの乳酸菌は胃酸に強く、生きたまま腸まで到達することができるとされています。
また、漬物よりも多くの乳酸菌が含まれています。それは、唐辛子を大量に使うため雑菌が繁殖しにくく、その分塩を減らすことができるため、塩分が多いと増えにくい乳酸菌がより多く生きているからです。
まとめ
日本は極端な暑さ寒さがなく、穏やかで湿気の多い気候ですが、これが発酵食品にとっては最適の環境であるとされています。
また、発酵させることで食品が傷みにくくもなるため、古くから数多くの種類があみだされてきました。
この先人の知恵の産物が腸内フローラにとってもいい働きをしてくれるのを感謝しながら、毎日の食生活に取り入れていきたいですね。