便秘でも、下痢でも、おなかの調子が悪いときって本当に不快ですよね。
ひどくなると、便秘はだるさや吐き気、頭痛などを伴ったり、下痢は冷や汗が出たりします。また、直接のお通じとは異なる不快な口臭・体臭の悩みや、肌荒れといった問題を引き起こしたりもします。
おなかが不調のとき、私たちの腸内はいったいどんな状態なのでしょうか?自己チェックで腸内環境を知り、改善して快適なおなかを取り戻しましょう!
フローラが乱れると、腸内はこんなに大変なことに!
ぜん動運動が弱くなって便が進まない
食べたものは胃で溶かされ、ドロドロの状態で小腸(十二指腸・空腸・回腸)に送られます。ここで消化酵素によってアミノ酸・ブドウ糖などに分解され、栄養素として吸収されます。
食べ物の残りかすは、大腸で水分が吸収され、固くなって便になります。腸内フローラがいい状態だと、生産される乳酸に腸が刺激を受け、ぜん動運動(縮んでは緩みを繰り返し、便を送る動き)が活発に。しかし、悪玉菌が優勢だとぜん動が鈍くなって便の動きが滞り、便秘になります。
便秘のときは、有害物質が全身に回る
便秘の状態の腸内では、食べたもののたんぱく質が腐敗し、硫化水素やアンモニアなどの有害物質や、発がん性の物質が発生しています。これらは腸から吸収され、血液に乗って全身に運ばれることに。たかが便秘と軽く考えていたら、それは大きな間違い!本当にコワイことですよね。
また便秘は精神とも関係し、やる気が出なかったり、憂うつ感を伴ったりします。仕事や勉強、趣味にも影響しますから、1日でも早く解消したいものですね。
便の水分が吸収されず、ひどい場合は脱水症状に
便秘とは逆に、ぜん動運動が過剰になったり、腸での水分吸収が悪い状態になると、便が軟らかくなって下痢症を起こします。通常より少し軟らかい程度の「軟便」ならまだいいのですが、「水様便」(液状の便)が続くと危険。脱水症状を起こす可能性があります。
そんなときは、スポーツドリンクなどアミノ酸やミネラルを含む飲み物を摂って、水分を補給するように心掛けましょう(ただし糖分も多いので摂りすぎにはご注意を)。下痢で何度もトイレに駆け込むのは、つらいものですよね。
過敏性腸症候群には便秘と下痢を繰り返すタイプも
腸の検査で異常が見つからないにもかかわらず、下痢や便秘が長く続く場合、過敏性腸症候群が疑われます。電車や車の中、試験や会議の前などに調子が悪くなる方が多いようです。消化器科を受診する患者の3割を占めるといわれるほど頻度の高い病気です。
原因は明確には解明されていないのですが、ストレスによって腸内フローラが乱れることが係わっていると考えられています。便秘型、下痢型のどちらかだけでなく、それを交互に繰り返す「交代型」もあり、非常にやっかいな病気。
いつもおなかの調子が悪いなんて、さらにストレスをつのらせてしまいそうです…。
器質性便秘という危険を見逃してはいけない
病気に由来しない便秘は「機能性便秘」といいますが、胃や腸、肛門などに疾患があって便秘になる状態は「器質性便秘」と呼ばれます。
原因には、大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、腸捻転、腹膜炎、子宮筋腫などが考えられます。疾患によるものですから、食事や生活習慣を見直すだけで改善はできません。病院で一度きちんと診察を受けることが大切です。
腸内フローラの状態チェックをやってみよう!
あなたの腸内環境は良好ですか?それとも何か不調や心配事をかかえている状態でしょうか?
ここでは、腸内フローラのチェックを食生活編、便通の状態編、生活習慣編の3方向から行います。これにより、自分がどの点に重点を置いて改善したらよいのか、または総合的に改善する必要があるのか、が分かります。
それでは、以下の項目に当てはまるかどうか、チェックしてみてください。
食生活が偏ると腸内環境は悪化する一方
- 肉類が大好き
- 脂っこい食べ物が好き
- 野菜はあまり食べない
- 発酵食品はあまり食べない
- 意識して水分を摂る方ではない
- フルーツが好きな方ではない
- 野菜は市販のジュースで摂る
- 食物繊維を特に意識して摂っていない
いずれも腸内フローラを乱す食習慣です。
たんぱく質や脂質は、悪玉菌のエサとなるもの。摂りすぎは禁物です。
(7)の野菜ジュースは、手軽に野菜を摂取する方法として有効なのですが、市販の野菜ジュースは口当たりをよくするために不溶性食物繊維が取り除かれています(水溶性食物繊維は含む)。不溶性食物繊維は手作りの野菜ジュースや、毎日の食事から補給しましょう。もしくは、手作りの野菜ジュースもおススメです。
美味しいですよね!自分の好みが活かせるところも◎。何よりも、野菜の栄養をしっかり摂取できますね。
あなたはどのタイプ?便通の状態を確認しよう
- 下痢や便秘が月に3日以上ある
- 排便によって腹痛や腹部不快感が軽減する
- 下痢や便秘のとき、排便の回数や便の形状に変化がある
- トイレが心配で外出するのがおっくう
- 便秘のとき、激しい腹痛がある
- 便秘のとき、発熱や吐き気を伴う
- おならが臭い
- 吹き出物や肌荒れがある
- 口臭や体臭がきつい
- 風邪をひきやすい
(1)~(4)は、過敏性腸症候群が疑われる症状です。
(5)~(6)は、器質性便秘の可能性があります。器質性便秘は疾患が原因ですので、すぐに専門機関で受診することが重要です。
(7)~(10)は、腸内フローラのバランスが崩れている証拠です。悪玉菌が腐敗させたたんぱく質はニオイのきついガスを発生させるので、おならが臭くなります。また、腸内環境の乱れは免疫力の低下につながりますので、ウイルスなどの外敵を排除できなくなってしまいます。これは無防備で危険な状態ですね。
生活習慣を振り返ることも大切です!
- トイレに行くのを我慢することが多い
- デスクワークや勉強で猫背になりやすい
- 椅子の背もたれによくもたれる
- あまり運動はしない
- 規則正しい生活とはいえない
- ストレスを感じることが多い
- 睡眠不足ぎみである
- 冷え性である
いずれも腸内フローラを乱す習慣です。
(2)は、腸を圧迫する姿勢が問題。猫背になっていると、腸がのびのびと動くことができません。
(3)も猫背になっている可能性があります。
(8)については、体温が低いと腸内の菌たちが元気をなくしてしまうので、ツボ刺激や食事改善、半身浴などで冷えを解消することが大切。体表36.5度(体内37度)を保つようにしたいものです。
自己チェック以外にも、腸内フローラを検査する方法があります。詳しくご覧になりたい方は、下記ページをご覧ください。
良い腸内フローラでは便はこうなる
さて、腸内フローラが乱れているときはどんな状態なのかをみてきましたが、では良い腸内フローラでは、便はどのようになっているのでしょうか。
理想の便はバナナ状で臭くない
健康な状態の腸内フローラは、善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌70%のバランスが保たれています。
腸内環境が良好だと、食べ物の残りかすは大腸内で粥状から半固形状、固形状と変化し、適度な湿気を含んだバナナ状の便となって滑らかに排泄されます。色は黄色~黄褐色で、においが少ないのが特徴です。
できれば毎日、こういう理想的なうんちをしたいものですね!
チェック表の結果をしっかり見つめて!
さてあなたは、前出のチェック表でいくつ当てはまったでしょうか?
数が多かった方は、良好な腸内フローラを目指して、いろいろ生活を見直す必要がありそうですね。
たとえば、トイレに行くのをつい我慢しがちなあなた。
仕事が忙しく、朝はぎりぎりまで寝ていたいから、朝食抜き、トイレタイム無し。仕事中にトイレに行くのは恥ずかしいなど、理由は様々でしょう・・・ しかし、便意があるのに出さないでいると、腸の活力が弱まり、便意に鈍感になってしまいます。そのため便秘が慢性化する可能性も…。
便意がなくても朝の決まった時間に便座に座る、また「したいときは我慢しない」という習慣をぜひともつけましょう。健康が何より大切。仕事中でも堂々と行っちゃいましょうよ!
腸内フローラの段階別改善策を始めよう
毎日理想的なうんちをするために、チェック表の結果に基づいて生活習慣を改善することはもちろん大事です。該当する項目の数は人によってまちまちでしょう。
そこで、自分の状況や程度に合わせて始められる段階的な改善策をご紹介します。
とりあえずは、野菜不足を解消してみて!
まずは初級編の改善策を。
野菜の摂取量が足りていないことを自覚している方は、そこから始めてみましょう。
野菜には、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維が豊富に含まれています。水溶性食物繊維は、善玉菌のエサになり、不溶性食物繊維には、腸内を掃除して、腐敗物を体外に出す働きがあります。つまり野菜はダブルの力で腸内環境を整えてくれるのです。これは心強い味方ですよね!
野菜の摂取によって、たった1日でも腸内フローラには変化があらわれるそうです。野菜にはすごいパワーが備わっているんですね。
野菜不足を上手に解消するには?
量は厚生労働省が提唱する「1日350g以上」を目標としましょう。
いちいち計るのは面倒でしょうから、農林水産省のサイトにある「目安」を参考にしてみてください。
小鉢(小皿)1皿分を約70gと考え、それを1日に5皿分以上摂るという方法です。70×5で350gになるわけです。野菜カレーや野菜炒めなどの大皿は2皿分として計算します。http://www.maff.go.jp/kyusyu/seiryuu/yasaikudamono/pdf/yasai350g_1.pdf
サラダでこれだけの量を摂ろうと思ったら結構大変ですが、温野菜にしてカサを減らしたり、生野菜ジュースにするのもいいですし、グリーンスムージーも利用してみる価値は大!
野菜が余ったときは、適度な大きさに切って風通しのいい日なたで乾燥させ、ドライベジタブルにしておくと便利。あとで手軽に摂れますし、それになんといってもオシャレです!
カレー、ポトフなどは野菜の種類を選ばずに使えますし、具なら何でもOKのお味噌汁も便利です、よ。炒めて中華やヴェトナム風にしても飽きずに食べられます。
やっぱり野菜自体が嫌い……そんな方には青汁もおススメです。でも、何か食べれそうな野菜があったら頑張ってみてくださいね。
ちょっと頑張る中級編─乳酸菌を摂ろう!
《野菜不足解消+乳酸菌摂取》で腸活効率を上げてみましょう
初級編で、野菜不足解消に慣れてきたら、それに乳酸菌の摂取も加えてみましょう。ヨーグルトやチーズ、味噌、キムチ、ぬか漬け、塩麹などに多く含まれています。最近では乳酸菌入りのチョコレートも販売されていますね。チョコで包んだ乳酸菌は、効率よく生きて腸まで届くそうです。
乳酸菌サプリメントも手軽に摂れて有効です。飲む時間や場所を選ばず、脂質やカロリーを低く抑えている製品もあるので、気になる方はそちらを試してみて。パウチタイプなら持ち運びにも便利ですね!
しっかり頑張る上級編─心のケアも大事です!
《野菜不足解消+乳酸菌摂取+運動+ストレス解消》でパワフル腸活やってみましょう
さて、次は運動の導入です。体を動かすと、腸内フローラが活性化することがわかっています。
運動といっても、いきなりジムに通ったり、何か特別なスポーツを始めたりする必要はありません。雑巾がけなど、ちょっと重めの家事でも充分です。
また、手軽に行えるウォーキングもおすすめ!ストレスの解消にもなり、一石二鳥です。ストレスは自律神経に悪影響をおよぼし、善玉菌を減らして腸内環境を悪化させます。日光浴や音楽鑑賞でリラックスし、夜は明るすぎる照明を避けてゆったりと過ごしましょう。アロマオイルの香りを楽しんだり、ココアやハーブティーを飲んでくつろぐのも効果的です。
これらの他にも、近年ミドリムシによって腸内フローラを改善できるということが分かってきました。ミドリムシと腸内フローラに関する内容を御覧になりたい方は、下記ページもご覧ください。
まとめ
腸内フローラを良くするためには、まず自分の状態を知ることが大事。自己チェックだけでは不安、という方には、腸内フローラ検査という方法もあります。これは、便の中の細菌を調べて、腸内環境を推定するもの。少量の検体と問診票をクリニックに郵送するだけで検査ができます。
おなかの不調は、心まで暗くしてしまいますよね。腸内フローラの状態をしっかり改善して、明るい笑顔の花が咲く毎日を目指しましょう!